国際:IEA PVPS Task 12が「太陽光パネルリサイクルの現状」国際報告書を公開、各国の規制と技術開発を網羅

【2025年9月】
国際エネルギー機関(IEA)の太陽光発電プログラム(PVPS)Task 12は、加盟各国における太陽光パネルリサイクルの現状・政策・技術開発を総合的にまとめた国際報告書『Status of PV Module Recycling in IEA PVPS Task 12 Countries』を発表した。

この報告書には27名の国際専門家が執筆者として名を連ね、欧州、日本、韓国、中国、オーストラリア、米国などの事例を幅広くカバー。各国・地域のEOL(End-of-Life:使用済み)モジュール管理の制度、規制、技術動向が比較できる内容になっている。

背景と各国の動き

世界的に太陽光発電の導入が加速するなか、今後数十年で寿命を迎えるパネルの量が急増するのは必至だ。報告書は、PVの持続可能性を守るためには「リサイクルの仕組みが不可欠」だと強調する。

各国の制度動向は以下の通りだ。

EU:WEEE指令に基づき、太陽光パネルを電子廃棄物として規制。
日本:PV専用のリサイクル制度整備を検討中。
韓国:拡大生産者責任(EPR)を適用し、回収・処理を義務化。
中国:国のインセンティブ政策でリサイクル事業を推進。
オーストラリア:製品スチュワードシップ制度の導入を計画。
米国:州単位でPV廃棄物規制が広がっている。

浮き彫りになる課題
報告書はまた、現在のリサイクルが抱える問題点も指摘する。
経済性:リサイクルコストが高く、回収素材の市場価値が十分に育っていない。
処理能力:将来の大量廃棄に対応できる規模の施設・技術が不足している。
技術面:ガラスやフレームの回収にとどまりがちで、銀やシリコンなど高価値資源の再利用はまだ発展途上。

一方で、回収素材を再びPVモジュールや他産業に戻すことを最終目標とした技術開発も進んでおり、実用化の可能性が高まっている。

コラムとしての視点

いま、世界各地で太陽光パネルが静かに“使用期限”を迎えつつある。
再エネの普及とともに、次にやってくるのは「その後をどうするか」という課題だ。

本報告書の共同編集者である小本圭一氏はこう語る。

「私たちの目標は、リサイクル能力をスケールアップし、経済的な持続可能性を高め、回収された素材が再びPVサプライチェーンに還元される未来をつくることです」。

制度と技術、そして“覚悟”。
この三つをどうそろえていくのか。
それこそが、再生可能エネルギーの真の持続可能性を試す次のステージなのかもしれない。

参考: https://iea-pvps.org/key-topics/t12-status-recycling-2025/

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