日本:中電工業・中国電力・YKK AP、ペロブスカイト太陽電池を用いたBIPV実証を開始― 内窓一体型で発電し、地域交流拠点としても活用する「HIROSHIMA ZERO BOX」を設置 ―
【広島 2025年12月4日】
中電工業、中国電力、YKK APの3社は、ペロブスカイト太陽電池を用いた建材一体型太陽光発電(BIPV)の実証実験を開始した。実証は、中電工業が広島市南区出汐で展開する地域交流広場「ヤマヤマミタ」に、YKK APが開発した実証実験ハウス「HIROSHIMA ZERO BOX(ヒロシマ・ゼロ・ボックス)」を設置して実施する。YKK APとして同ハウスの西日本設置は初という。
背景と狙い
太陽光発電の普及を進めるうえで、都市空間の制約や既存建物への導入のしやすさは重要な論点となっている。BIPVは窓や壁など建物部材と一体化することで、設置場所の拡張や景観・機能性の両立が期待される。
本取り組みでは、環境負荷低減と都市空間の有効活用に向け、発電性能と実用性の検証を行うとともに、実証設備を地域の交流拠点として開放し、地域の脱炭素への関心を高めることを狙う。
技術・実証のポイント
① ペロブスカイト太陽電池を内窓に組み込むBIPV
HIROSHIMA ZERO BOXでは、ペロブスカイト太陽電池を内窓に組み込んだBIPVを採用。設置工事やメンテナンスの容易さに加え、断熱性・遮音性といった建材としての機能と「発電」を同時に得る形を検証する。
② 複数方式の太陽電池を同一ハウスで比較・運用
内窓BIPV(ガラス型ペロブスカイト、軽量型単結晶シリコン)に加え、壁設置BIPV/屋根設置PV(いずれも単結晶シリコン)を組み合わせ、実運用環境での性能評価につなげる。
③ 発電電力をハウス内で活用し、実用性を評価
発電した電気は、ハウス内の照明や空調に活用。単なる発電量の確認にとどまらず、施設運用の中での使い勝手も含めて実証する。
④ 「未来のエネルギー×地域交流」の実装フィールド
ヤマヤマミタ内に設置し、インフォメーションセンター兼交流拠点として活用。地域住民、学校、企業などが集い、脱炭素を考えるきっかけとなる場づくりも取り込む。
HIROSHIMA ZERO BOXの概要(公表情報)
寸法:長さ 約6.0m × 幅 約2.5m × 高さ 約3.5m
太陽電池構成:
内窓設置BIPV/ガラス型ペロブスカイト(600×1,200mm)5枚
内窓設置BIPV/軽量型単結晶シリコン(385×418mm)2枚
壁設置BIPV/単結晶シリコン(1,000×1,200mm)4枚
屋根設置PV/単結晶シリコン(1,054×1,616mm)6枚
実証実験の概要
期間:2025年12月4日~2027年3月31日(予定)
場所:地域交流広場 ヤマヤマミタ(広島市南区出汐二丁目3-29)
実験項目:ペロブスカイト太陽光発電等の発電性能および実用性の検証
開放時間:10時~16時(平日)
見学:団体見学は中電工業へメールまたは電話で申込(団体名・人数・希望日時を記載)
効果と展望
3社は、本取り組みを通じて建材一体型太陽光発電の社会実装を推進し、地域の脱炭素化に貢献する新たなサービス開発と事業展開を目指すとしている。実証の結果次第では、既存ビルへの内窓型BIPV導入の現実性が高まり、都市部での太陽光の選択肢拡大につながる可能性がある。