中国:太陽光パネル廃棄物のリサイクル潜在量を省別に定量評価 ― 製品寿命分布と処理能力を統合した分析 ―

【2025年12月8日 公開】
太陽光発電(PV)の急速な普及に伴い、将来的に大量発生が見込まれる使用済み太陽光パネルへの対応が世界的な課題となっている。こうした中、中国を対象に、PVパネルの寿命分布とリサイクル処理能力を統合し、省別のリサイクル潜在量を定量評価した研究が発表された。

背景
PVパネルは一般に20〜30年の耐用年数を持つとされるが、実際の廃棄時期は設置年代、使用環境、品質差などにより大きくばらつく。従来の廃棄量予測では、単一の寿命を仮定した推計が多く、実態との乖離が課題とされてきた。
また、リサイクルに関しても、理論上の回収可能量に焦点が当てられることが多く、地域ごとの処理施設能力やインフラ制約を十分に反映した評価は限定的だった。

研究の特徴
本研究では、中国国内を対象に以下の点を組み合わせた分析を行っている。
製品寿命分布の導入
PVモジュールの寿命を統計分布(ワイブル分布)としてモデル化し、早期廃棄や長期使用といった実態を反映。
スクラップ処理能力の考慮
各省におけるリサイクル施設の処理能力を組み込み、廃棄物発生量と実際に処理可能な量との差を定量化。
省別評価
中国の省単位でPV廃棄物の発生ポテンシャルとリサイクル可能量を算出し、地域間の偏在を明らかにした。

主な結果
分析の結果、PVパネル廃棄物は今後急増する一方で、リサイクル処理能力の地域差が大きく、一部の省では発生量に対して処理能力が大幅に不足する可能性が示された。
また、寿命分布を考慮したことで、従来の一律耐用年数モデルと比べ、早期に大量の廃棄パネルが発生するシナリオが現実的であることが明らかになった。

示唆
本研究は、PVリサイクルを「理論上の回収可能量」ではなく、「実際に処理できる量」という観点から評価した点に特徴がある。
リサイクル能力の地域偏在を踏まえた施設配置や、省をまたぐ広域処理体制の構築、将来の廃棄ピークを見据えた段階的な設備投資の必要性が示唆されている。
中国における本分析は、今後PV廃棄物の増加が見込まれる他国・地域にとっても、数量予測とリサイクルインフラ整備を一体的に検討する上で参考となる事例といえる。

出典:ScienceDirect掲載論文
“Assessment of provincial PV recycling potential: Integrating product lifetime distribution and scrap capacity”(2025年)

▶ 論文URL
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352550925002258

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