再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会の「中間取りまとめ」を公表

2024年1月30日、環境省は、再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会の「中間取りまとめ」を公表しました。今回は、太陽光設備の廃棄されるまでの各段階ごとにおいて現状と今後の方向性が整理されているので、その中のポイントをご紹介します。

太陽光発電設備の廃棄・リサイクルに関する各事業段階の現状と検討の方向性

<製造・輸入・販売>

現在、FIT/FIP制度において、製造事業者等がJPEA代行申請センター(JP-AC)にパネルの型式を登録し、発電事業者はその型式登録の中からパネルを選択の上、認定を申請する仕組みがある。このことを踏まえ、製造事業者は型式登録の際に4物質(鉛、カド 4 4 ミウム、ヒ素、セレン)の含有情報や製造期間の情報を登録可能とすることとした。

また、JP-ACの型式登録情報において含有物質情報に関するデータベースを作成すると共に、事業者が新規にFIT/FIPの認定申請を行う場合には、含有物質情報の登録がある型式のパネルのみの使用を求めることとした。 これらの措置については、再エネ特措法の省令改正を行った上で、含有物質情報に関するデータベースの作成や事業者に対する周知等を進め、2024 年春に施行を予定している。

<運転~事業終了>

FIT/FIP制度においては、事業者に対して事業規律の確保や事業実施状況の情報提供を求めている。特に10kW以上の太陽光発電設備については、処分費用を調査・考慮して積立基準額を設定し、事業実施期間の後半10年間で積立を実施することが義務付けられている。 他方で、非FIT/FIP事業については事業に関する情報の把握に課題がある。また、FIT/FIP対象事業であっても、事業計画等に関する情報は把握されているものの、パネルの更新等がされた場合、更新後の新パネルは事業計画情報の中で管理されるが、排出された旧パネルの情報の把握に課題がある。

電気事業の終了に伴い、適切に系統から切断された太陽光パネルは電気事業法の10kW未満の太陽光発電についても、適用対象外となる。使用済み太陽光パネルが放置された場合には、当該パネルがただちに廃棄物に該当するとは限らないため、廃棄物処理法によっても対応できない場合がある。そのため、適切な管理に関する関係法令の検証、検討を行った上で、解体・撤去工事の際の感電等を防ぎ、安全に解体・撤去できる使用済太陽光発電設備の状態を維持するために必要な対応を検討する必要がある。

<長期活用・リユース >

FIT/FIP制度においては、発電事業者に対し、事業期間後も使用可能なパネルを長期使用することを努力義務として求めている。これまで、「太陽電池モジュールの適切なリユースのためのガイドライン」やパンフレットを作成し、太陽光パネルのリユースに当たって関係する事業者に周知してきた。

しかし、使用済太陽光パネルの性能等の検査がされないまま不適正に輸出されている可能性があるとの指摘や、リユースパネルのメーカー保証等の問題に関する意見がある。リユースパネルの性能診断を行っている事業者も存在するが、性能診断に関する標準の策定等は行われていない

そのため、発電事業終了後等に、更に使用可能なパネルについては、リユース適合性を診断する事業者によって、リユース品として活用可能性のあるパネルが適正に検査された上で、リユースパネルとして流通する枠組みの構築や、他製品の事例を参考とした不適正輸出の防止策について検討する必要がある。

<解体撤去、収集運搬>

使用済太陽光発電設備の取扱い、解体・撤去から処理に至るまでの関係者の留意事項等を示した「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン」(2016年第1版、2018年第2版)を策定している。しかし現状は、太陽光発電設備の解体・撤去工事の施工実績が少ないため、ガイドラインに基づいた安全管理や注意事項等の周知徹底が十分ではない。

そのため、使用済太陽光パネルのリユースやリサイクルを促進するためには、解体・撤去段階においてリユース事業者やリサイクル事業者に引渡し可能な状態を維持した解体方法を浸透させる必要がある。また、撤去されたパネルがリユース事業者、リサイクル事業者へ確実に引渡される体制の構築が必要である。

<リサイクル段階>

太陽光パネルのリサイクルが可能な施設は増えつつあるが、将来の排出ピークを考えると、国内施設の分布に地域差があり、処理可能量も十分でない。一方で、排出ピークの後にリサイクル施設の処理可能量が過大になることがないよう、処理量のピークを平準化することも必要である。 現状ではリサイクルに係る法規制はないことから、処理方法として、破砕後に埋立処分する方法や素材ごとに分離して回収素材をリサイクルする方法等の様々な方法がある。

処分のコストのみを考慮すると、必ずしもリサイクルが優先的に選択されない場合がある。今後見込まれる排出量のピークに適切に対応するためには、現状のリサイクル処理技術とその費用を把握した上で、素材ごとに回収できる高度な技術の確立と処理費用の低減を進める必要がある。 回収された素材については、ガラスやシリコン等の再生資源の用途開発や品質向上による市場を形成してくことが重要である。

 

新たな仕組みの構築や制度的な対応に向けて、引き続き検討を深める事項

・ 製造段階から廃棄・リサイクルが完了するまでのトレーサビリティを確保し、使用済太陽光発電設備の移動情報、含有物質情報などリユース・リサイクル・適正処理に必要な情報を把握する仕組み

・ 発電事業終了後、発電事業者から解体・撤去、収集運搬、リユースやリサイクル等に関わる各関係事業者間で、使用済太陽光パネルの引渡し及び引取りが確実に実施されるための仕組み

・ 適正なリユースの促進のための方策

・ 事業形態や設置形態を問わず、全体としてリサイクル、適正処理等の費用が確保される仕組み

・ 発電事業者等の責任による処理を原則として、万が一、事業終了後に太陽光発電設備が放置された場合の対応に関する、関係法令等を踏まえた事業形態や設置形態ごとの整理

 

<参考URL>
再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会中間取りまとめhttps://www.env.go.jp/council/03recycle/page_00044.html

 

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